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第9章 文水の事情

「管理っ――こ、この人は別に、私なんかのことで感情的になったりしてるわけじゃ」

「そんなの知るかよ。どーでもいいし。とにかく、俺としてはコイツのつまらねー話を聞くのがウンザリなわけ。だから、もう――」

　幕引きをしようとする木村の言葉に重ね、俺は言った。

「最初から、話してなんかいない」

「は？」

「話にならないから。今の貴方じゃ」

「話にならないって……どーゆー意味？」

「別に、そのままの意味ですけど。こちらが真面に話したって、通じる相手じゃないってこと。すぐにわかりました。だから、貴方になにを言っても無駄なんだ」

　こちらの冷めた言葉に一瞬、木村の表情が苦々しいものに変わる。けれど、すぐに思い直したように、木村は持ち前の軽薄さを取り戻した。

「ヘヘヘ……アレ、おかしいな。じゃあ、今までの時間なんだったわけ？　無駄とか言いながら、随分長々と語ってくれてたけど」

「それは、いつか届くこともあるのかと、そう思ったから」

「はあ？　なにそれ？」

「やっぱり届かないですよね、今は。でも、もう一度繰り返します。木村さん、貴方は卑怯者です」

「ハハハ！　だから、なんなんだよ一体？　そう言えば、少しは気でも晴れるのか？」