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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「オイ、ちょっと待て!」
店を出ようとした時だ。振り返ると、木村が店の出口付近まで追いかけて来ていた。その足取りは飲酒のため、既にふらふらとしておぼつかない。
「お、お前に言われたことなんて心底どーでもいいんだけどさぁ。なぁんか、モヤモヤするんだよ。このままだと」
「それで?」
「へへ、さっきお前が言ってたじゃん。待ち伏せがどーのこーのってさ。できるぜ、そーゆーのも」
「どうするんです?」
「お、俺の親父、この界隈で結構顔効きなわけ。不動産業だけじゃなく、かっ、金貸しとかもしててさぁ。そういうの、わかるぅ?」
木村はもう、呂律すら上手く回らないようだ。
「つまり、権力者というわけですね」
「そー、そー。そういう人間ってさぁ。大体ヤバい筋とも繋がってるわけ? だっ、だからさぁ、わかる? これから親父に言って、怖い人を何人かよこしてもらったっていいんだぜ」
「ああ、よくわかります」
「は?」
「俺の親父も、ちょっとした権力者ですから」
俺はスマホを取り出すと、一枚の画像を木村に見せた。それは数年前、祖父の葬儀で久しぶりに家族が揃った時に撮影したもの。俺と瑞月の間に立つ人物の顔を拡大してやると――。
「え? これって確か、きしもと……?」
どうやらネットやテレビで、顔ぐらいは見たことがあるようだった。だったら話が早い。
「そう、岸本英次。俺の親父です」