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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「マ、マジ……?」
そう言って顔を向けた木村に、今度は高坂さんが応じる。
「うん、マジみたい。私、この人の妹――つまり、岸本英次の娘と同じ大学なの。しかも同じサークルで、今も一緒に旅行中なんだ」
こんな場面でも『友達』という言葉を用いないのが、彼女らしいと感じる。
「はあっ!?」
木村は酔いが一気に覚めたかのように目を見開くと、俺の顔をまじまじと眺めてくる。だけど、こちらとしては、あまり長引かせたくない話題なので、淡々と話を進めた。
「親父にどういった伝手があるのか、それはわかりませんけど。たぶん、簡単なんだと思います」
「な、なにが?」
「昔から言ってたんです。どうしても許せない奴がいたら、俺に言えって。人一人を社会的に、あるいはそのままの意味で抹殺することだって、造作もないことだと。自慢げにね」
「まっ……抹殺? さ、流石に、冗談だろ?」
その顔色は、すっかり青ざめている。俺がその左肩にポンと手を置くと、木村は「ひっ」と細い呻き声を上げた。
その耳元で、俺は囁きかけるように言う。
「ええ、悪い冗談ですよ。そういうの嫌いなんです、俺も。だから、これ以上は深入りしないようにしましょう。お互いにね」
「う、うん……わ、わかった」
そう答え何度も頷きながら、ペタンと腰から床に崩れ落ちた木村を残し、俺たちは店を後にした。