この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情


 高坂文水と木村という男。その因縁における清算が、これで片付いたのかは不明。少なくとも綺麗さっぱりとはいくはずもなく。最後は些か強引に幕を引いた感じにしてしまったから、あれでよかったのだろうかと、俺自身悩ましく思うところでもある。

 が、しかしながら、やはり吹っ切るべきだと思う。要はきっかけにできれば、それで十分。高坂さんなら、そうできるはずだ。

 そんな想いを彼女に寄り添い、懇切丁寧に伝えたいという気持ちが俺の中に芽生えている。そう、落ち着いた場所でゆっくりと。その時に、もし涙を流すのなら、俺の貧弱な胸板でよければ、いくらでも差し出したいとすら思うのだ。

 それで吹っ切れるのなら、この際、存分に泣いたっていいのだから。

 だけど、今のところ、その様な展開が訪れる様子は一切なく。それは高坂さんの問題ではなく、俺の方にその余裕がないからだった。というのも――

「うええっ……」

 店を出てすぐに、俺は細い路地に駆け込むと電柱に手をついた。そしてそのまま蹲ると、見っともないことに激しく嘔吐(えず)き始めたのだった……。

「か、管理人さん、大丈夫?」

「はあ、はあ……ひ、昼ほとんど食べなかったおかげで、なんとか吐かずにはすみそうだけど……うえっ!」

「ほら、まだじっとしてないと」

 高坂さんが背中を優しくさすってくれている。その甲斐もあってか、少し楽になってきたのだけど。

「でも、急にどうしたの?」

「ハハ……たぶん、親父のせい」

「お父さんの?」

「うん……ちゃんと話したことなかったかな? 俺は親父のことが、とにかく大嫌いでさ」

「ああ、その反発から小説書き始めたとか。そんな風には聞いてるよ」

「そう……なのに、さっき、その親父の権力の傘を着たようなこと言ってさ。その拒否反応と自己嫌悪が合わさった結果、この様(ざま)というわけで……」

「アハハハ!」

「ひ、ひどいな……人が苦しんでるのを笑うなんて」

「フフフ、ゴメンゴメン! でも、なんだか管理人さんらしいなって」

 俺自身は、なんとも格好がつかなかったけど。でも、久しぶりに見せてくれた高坂さんらしい笑顔が、なによりの収穫だったのだと、今は嬉しく思えるから。

 そうしてこの後、俺と高坂さんのデート(という名目)の一日は、ついに最終盤を迎えるのである。

/879ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ