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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「そんな風に思ってくれるお姉さんの気持ち、絶対伝わってると思うから」
「……」
それでも高坂さんは迷っていた。当然だろう。その不安は察して余りあるものだ。
それから一分後、ようやく彼女はスマホを手にする。
「じゃあ、電話してみるね。理樹、出てくれるかわからないけど……」
スマホを操作する、その指先が微かに震えた。
大丈夫だよ、絶対。
「あ……理樹? うん……私」
俺は少し離れたところから、その様子を見守っていた。
すると最初こそ強張っていた肩が、次第に柔らかな曲線を取り戻していく。五分弱の通話を終えて俺のところに戻る頃には、彼女は少しはにかんだような笑みを携えていた。
だから、こう聞くのは野暮化もしれないけど。
「どうだった?」
「ああ、うん。とりあえず元気でやってるみたい。今は内緒だけど、働いてお金を貯めたらやりたいことができたんだって」
「へえ」
「ウフフ」
「?」
実に楽しそうに笑みを零した彼女を、不思議そうに眺めていると。
「理樹のやつ。生意気にも、こんな風に言ったの」
「なんて?」
「今までのこと、ずっと、ありがとうね。僕も頑張るから、姉ちゃんも頑張って――てさ」
「よかったね」
「うん!」
やっぱり一緒に来て、よかった。心底そう思える顔を、彼女は見せてくれた。