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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
「戻らないって、どうして?」
「それは高坂さんの事情だから、俺からはなんとも」
「なんですかぁ、それ? 私たち、なにも聞いてませんよー。なにか言ってませんでした?」
「どうせまた大学で会うし、ってさ。ああ、それと部屋にある高坂さんの荷物は、時間がある時に適当に纏めておいてくれない。送るのは俺の方でやるからさ」
ジト……。
夏輝さんは事務的な話に関心を示すことなく、只々訝しそうに俺の顔を仰ぎ見ている。そうして――
「なぁんか、あやしぃー」
「な、なにが?」
「さっき文水さんの事情とか言ってましたけど、その事情とお兄さんはまったくの無関係なんですか?」
「えっと、どういう意味?」
「また、とぼけちゃって」
「別に、とぼけてなんかっ」
「では伺いますが、なぜお兄さんは朝帰りなんです? 普通に考えれば昨日のデート相手である文水さんと、一晩中一緒だったと考えるのが普通だと思いますけど」
「そ、それは……」
こちらが怯んだとみるや、夏輝木葉はまたニヤと口角を上げた。前々から感じていたことだが、どうも俺に対しては、少なからずエスっ気のようなものを纏って相対しているような気がする。
「もし正直に話すのなら、瑞月やつっちーには黙ってますよ」
うーん……。俺は少し考えた後で。
「悪いけど黙秘させてもらう。只これだけは言わせてくれ。帰りが朝になったのは事実あけど、たぶん夏輝さんが考えてるような展開にはなってないよ」
「なにそれ? そんな曖昧な説明を信じろとでも?」
「別に、信じてくれなくてもいいけど」