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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
キッチンカウンター越しに挨拶を口にしたのは、スウェット姿の瑞月だった。柱を背にして横を向いたまま、なんだか居心地が悪そうにしている。それが、すっぴんの素顔を見られたくないせいなのか、単に顔を合わせたくないためなのか、その判断は難しい。
しかし少なくとも、俺という存在を意識においてくれていることは確かだ。夏輝さんだけなら、こんなぎこちない挨拶にはなっていないはず。
「おはよう。体調は平気か?」
「別に。なんで?」
「いや、俺の方は最悪だったもんで……」
「一緒にしないでよ。バーカ」
プイと顔を背け、瑞月がリビングの方へ行ってしまうと。
「あ、瑞月! 今日だけどさぁ――」
夏輝さんも、その後を追う。一人残され、俺はふっと息をついた。
「まあ、昨日よりはね……」
口をついていたのは、妹の瑞月の態度のことである。まだ硬いことには変わりないが、昨日のようにガン無視されないだけ随分とましな気がした。昨夜言っていたように、自分なりに改めようという気持ちの表れだろう。だがそれも、他の三人の手前ということではあるのだけど……。
昔のような兄妹関係に、なんとか戻れないものだろうか。その点については、俺自身の浅薄な行動が完全に災いしているので、変わりやすい空模様でもみるように瑞月の機嫌を窺っているだけでは、あまりにも無責任だ。
瑞月とは、この二週間の内にちゃんと向き合わなければ。その結果、関係が更にこじれてしまう可能性も否めないが、恐れてもはじまらない。