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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで


「やっぱ、マズイよなぁ……」

 考えを巡らせる最中、思わず呟いていた。瑞月との関係を改善しようとする時に、昨夜の一件はどう考えてもプラスにはなり得ない。妹の連れてきた友達の一人と、最初の夜に肉体関係を結んでしまったなんて……。

 しかし、いきなり夜這いをかけられた身としては、それを責められても辛い。否、やってしまったことは認めざるを得ないが、只でさえ俺は酔っていたわけで――と、そこまで考えたところで、俺はハタと気づくのである。

「あれ? もしかして、これってハニートラップじゃ……?」

 状況を顧みるほどに、そのワードは合点のいく響きに思えた。まるでパズルの最後のピースが、ぴたりとはまったように。

 俺自身の現在の立場を世間に照らし合わせるなら、よくてフリーター悪ければニートといったところ。元より、比較的お気楽とされる大学生としてさえ耐えられなかったほどの、社会不適合者である。当然ながらそんな男に、ハニーなトラップを仕掛ける酔狂な女は皆無だろう。だが、その親父が誰かということを鑑みれば、状況は一変するのだ。

 小説家志望などと言いながら、避暑地の別荘に一人暮らしている道楽息子。客観的な視点に立った時に、俺ってかなり極上のカモなのかもしれない。

「いや、だけど。流石にハニートラップとか――」

「あのぉ――」

「――ん?」

「どうも、おはようございます」

 いつの間にか傍らに立ち、丁寧にお辞儀をしたのは松川土埜だ。

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