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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
「今の気持ち……か」
高坂文水と過ごした一日を想いながら、俺は見慣れた書斎の天井を見つめる。あの感情の昂りは、刹那的なものに過ぎないのか、――それとも?
「いや、俺の方こそ……このままじゃどうしようもないだろ!」
吐き捨てるように言うと、俺は頭を抱えて寝返りを打った。
今の俺が在る場所はといったら、森林に囲まれた別荘の地下室。まだ何者でもない俺が、なにを望むというのか。その点において俺自身、自分のないといった彼女となんら変わるものではない。
そして高坂文水は、仕切り直すのだと言った。だったらいずれにせよ、俺も時間をかけて見つめ直すしかないだろう。今は、それしか……。
確かに気持ちは、ぐちゃぐちゃだ。目を背けている部分も含め。やはり今の俺が一人の女性の元へと突っ走ることなんて、できないことなのかもしれない。
それは弱さのせい? わからないが、少なくとも否定はできないだろう。それとは別に、投げ出してはいけないものへの意識だって残るのだから。
「! ……そうだ」
俺はほとんど寝ないままに、ベッドからすくりと起き出す。この後、夏輝木葉と出かけてしまう前に、話しておきたいことがあったからだ。
話したい相手なら一階にいる。そう、妹の瑞月だ。まだ鎮まり返っている和室の前に立つと、黒い襖縁を軽く叩いた。
「おい、瑞月。ちょっといいか?」
声をかけて十秒待ったが、まだ返事はなかったが。