この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
「なあ、みず――!」
再び声をかけようとした時、不意に襖が開かれていた。しかし――
「こんな朝から、どうしたの?」
「あ、ああ、悪い。ちょっとだけ、話しておきたいことがあって」
襖が開かれたのは、ほんの僅かな隙間。そこから、瑞月は片方の目だけを覗かせている。
まだ寝ていたのか、部屋中は暗かった。瑞月の瞳だけが、廊下からの明かりをぼんやりと映している。
「み、瑞月?」
「なに?」
「いや、だから話が」
「いいよ。そのまま、して」
瑞月は片目だけで俺を見据えながら、その様に言う。どうやら襖を大きく開いて顔を合わせる気はないみたいだ。
「……?」
その時、そこはかとない違和感を覚えた。だけどそれが、なんに対してなのか、この時は気づくことができなかった。
だから驚くことになるのは、次の日ということになるのだが……。
「それで、話しておきたいことって?」
「あ、ああ……それがさ」
俺は一旦咳払いをしてから、襖の隙間の瑞月に向けてこう切り出した。
「高坂さんは、この旅行を終わりにするそうだ。つまり、もう別荘には戻ってこない」
「ふーん……なにか急用でも?」
「いや。そういう理由じゃなさそうだけど……」
「じゃあ、どんな理由?」
「それは――」
言葉に詰まった俺を一瞥すると、瑞月は事も無げにこんな風に言う。
「まあ、勝手にすればいいけどね。それで、私にはなにか言ってた?」
「ああ、えっと……契約(やくそく)を果たせなくて、ごめん――とか」
「!」