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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
表情は見えないが、この時はじめて瑞月はそれまでと違う反応を示したようだ。暫く押し黙った後で、瑞月にこう聞かれる。
「あの人がそう言った意味、涼一はわかってるの?」
「あ、いや……」
どう答えようかと思案するまでもなかった。
「やっぱり、いい」
「え?」
「だって、今日は私の番ではないし」
瑞月は言うと、ぴしゃりと襖を閉ざしてしまう。
「なんだか、素っ気ないな」
廊下をリビングの方に戻りながら、思わず呟いた。同時に「私の番」という瑞月の言葉が、妙に印象に残っていた。
今日は夏輝さんで、明日は瑞月。相手を変えつつの四日連続デートというふざけたイベントも、残すところは半分だ。
一体、それになんの意味があるのか。彼女たちに向き合う必要は確かに感じた。でも結局、高坂文水は俺の元を去った。そして、松川土埜は――と、丁度そんな風に考えた時だっただけに、虚を突かれてしまう。
「あ、おはようございます」
「あ! まっ――いやっ、つっちー!?」
「どうしたんですか? そんなに慌てて」
「べ、別に慌ててるわけじゃっ……ないんだけど、ね」
とか言いながら、俺はすっかり狼狽えている。
こうして彼女と顔を合わせるのは、夕日を見たデート以来。たった二日前のことなのに、やけに前のことのように感じるのは、もしかしたら俺だけではないのかもしれないけど、それは別の次元の話としよう。
ともかく、一旦気持ちを落ち着けなければ。
「おはよう、つっちー。それでさ――」
「はい、なにか?」
気にならないはずのない彼女を前にして、この後で俺は、なにをどう訊ねようとしているのだろう。