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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
「は……?」
一瞬、言葉を租借しきれずに立ち尽くす俺。
そんなリアクションと、外から聴こえてくる小鳥たちのさえずりが、かえって彼女を居たたまれなくしたかのように。
「ほ、本当に……ごめんなさい」
つっちーは、心から申し訳なさそうに、小さな声音で謝るのであるが。
「いや、別に謝る必要なんて、ないんだ……けどさぁ」
なんで、唐突にこのあられもない告白を? つっちーの心理については、謎が深まるばかりだった。
「……」
口を噤んでしまった彼女を前に、どうしていいのやらわからなくなった俺は、とりあえず一旦、間を取ろうと試みるが。
「あ、そうだ。なにか冷たいものでも飲んで――」
冷蔵庫のあるキッチンへ行こうとした俺の、シャツの裾を袖をつっちーに掴まれていた。
「つっちー」
足を止め振り向いた俺に、彼女はこんな風に言う。
「朝から、こんな話を聞かせたり……どうかしてますよね、私」
「いや、そんなことないけど」
「でも、私にとって、これは前進なんです」
「……」
なんとなくだが、わからなくもない気がしている。なにせ俺は、松川土埜の壮絶な話を聞いているのだから。
「この間のデートをきっかけとして、私はようやく気づけました。淫らな情欲に溺れることで、心の闇の誤魔化すことになんの意味もないってこと。いいえ、それどころか結果として闇を増幅しかねないんだって……それを涼一さんに気づかせてもらったんです」
「そんな、俺なんて別に……でも、つっちーがそう思えたのなら、それがなによりというか」