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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
「うふふふ。それにー、次の日になっても、お兄さんあれが私だって、全然気がついてないんですしー」
「くっ……!」
苛立ちを、とにかく今は治めようじゃないか。ともあれ、ようやく夏輝木葉自身が、あれが自分だったことを認めているのだから。
なぜ、出会った初日に。それも友人の兄に対して、性交渉をしかけなければならなかったのか。本当に知りたいのは、その動機の部分だった。
「夏輝さん、もう一度ちゃんと聞くね。確かに行為自体は、俺がその気になってしまった結果だと認めよう。だけど、泥酔した男のベッドに、キミの方から潜り込んだのは事実だろ?」
「ええ、それはそうです」
車は林間を抜け、少し拓けたところの交差点で停まる。赤に変わった信号を見つめたまま、俺は彼女に聞いた。
「なぜ、そんなことを?」
「それは――」
彼女は一旦間を置くと、やや俯いていた。だが、信号が青に変わる前には俺の方に視線を戻すと、こう答えたのである。
「――復讐のため、です」
その刹那にみせた笑顔は、それまでのどの顔とも違うはかなげなものに感じた。
そして夏輝木葉と俺自身との因縁が、今、紡ぎ出されようとしている。