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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
五月女さんから勉強を教わることを了承した時、リビングでも俺の使っていた部屋でもなく、どこか埃臭いこの書斎を選んだのは、俺が狭い場所の方が落ち着くと答えたからだった。
その前までは居並んだ書架に一冊の本すら置かれてはいなかったけれど、今ではデスクの近い場所から参考書や問題集、それに加え様々な分野の資料や百科事典、また日本及び世界の名作文学集などが揃えられていた。すべて五月女さんが用意したもの。
そんなものを振り向き眺めた後、デスクに向き直った俺は解きかけの因数分解の設問を一瞥すると、すぐに大欠伸をした。
「ふわあぁぁっ……なんでこんなことに、なってんだよ」
中学まで家族で暮らしていた超セレブ御用達の高層マンション。そんな浮き世離れした場所から抜け出し一人暮らしを画策するも、自由を手にしたと思った俺の前に現れた女(ひと)こそ五月女日名子(さつきめ ひなこ)という美女だった。
あらゆる世話をするように、と親父が差し向けた彼女に対して当然ながら当初、反発心を抱くこととなった。否、それは一見素直に勉強を教わっていたこの頃であっても、消え失せてなどいなかったはずだ。
それでは、なぜ俺は懐柔されてしまったのか。それはやはり、あの一件によるところが大きいと言わざるを得ない。彼女によって与えられた快感と屈辱と呼ぶには自らの未熟さが釣り合わない惨めな想い。そう、俺は大人の彼女によって、ガキで無知な己の姿を突きつけられていた。