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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
◆ ◆
五月女(さつきめ)さんから電話があったのは、五日ほど前のことだった。
「来週から、瑞月(みずき)ちゃんがお友達を連れて遊びにいくそうよ。別荘に滞在中のお世話を、全面的にお願いしたいのだけど」
一瞬、久しぶりの電話に少しドキリとしたけど、その要件を聞くと思わず顔をしかめてしまった。
「瑞月が……なんで俺のところに? それも、友達も一緒って……」
「あら、大学生になってはじめての夏休みですもの。お友達と一緒に遊びに行くのは、普通のことじゃなくて?」
「それは勝手だけど。わざわざこっちに来る意味がわからないし」
「涼一(りょういち)さんは、国内でも有数の避暑地に住んでいるということをお忘れ? それも木々に囲まれ深閑としたシックな造りの別荘ですもの。この酷暑に訪れる旅先として、申し分のない選択だと思うのだけど」
「そういうことじゃなく……あの瑞月が俺と顔を合わせたいとは、とても考えられないんだ」
「なぜ? かわいい妹さん――でしょう?」
「……」
五月女さんは、俺たち兄妹の関係をしらないのだろうか? それともわかった上で惚けているのか、電話口の口調からは判断することができなかった。
「お客が訪れる際は、別荘の管理人として相応のもてなしをすること。そういうお約束の上で、別荘での作家修行の許しを得ているのだから。どの道、涼一さんに断る権利はないのよ」
「それは、わかってるよ。だけど――」
「では、よろしくお願いね。彼女たちの詳しい予定は、後でメールさせてもらうから」
「え、ちょっと――五月女さん」
俺はそうして、実に面倒な案件を押しつけられてしまった。後で送られてきたメールに添付されたファイルをプリントアウトすると、瑞月たちのスケジュール表はA4用紙三枚にも及ぶ。それに一通り目を通すと、頭痛を覚え頭を抱えた。