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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
「涼一、起こしてきてよ」
瑞月に言われる。耳慣れない「涼一」という呼び方を少しくすぐったく感じていると、先に夏輝さんから茶々が入った。
「あれぇ? 瑞月、お兄さんのこと名前呼びだっけ? でも、昨日は確かお兄ちゃんって――」
「いいの! どうせ歳なんて、ひとつしか違わないもん」
そう言って眉根を寄せる瑞月に、ようやく反論する。
「それは勝手に、どーぞ。だけど、起こしにいくのは勘弁してくれ。そこは女子同士の方がいいだろ?」
すると、気を遣った松川さんが。
「あ、じゃあ私が――」
そう言って、立ち上がってくれたのだけど。
「……」
「あ……!」
その刹那、瑞月から発せられた無言の圧力によって、松川さんの動きが止まる。瑞月の視線にどんな意図が含まれているのかは不明だが、松川さんが困惑しているのは確かなようだった。
一気にピリピリとした雰囲気を前に、仕方なく席を立たされたのは、俺。
「外から呼びかけるだけだぞ。それで起きない時は頼むからな」
なんなんだよ。みんな一緒に旅行に来てるんだから、ちゃんと仲良くしろよ。そういえば昨日、高坂さんも妙な言い方をしていたよな……。
これから起こしに向かう彼女の顔を浮かべながら、二階に上がるとシングルの客間の前に立つ。そして無駄に緊張を高めながら、遠慮気味にドアをノックした。
「こ、高坂さーん――?」