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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
言葉を返さないでいると、五月女さんは俺からすっと顔を背けた。それから汚れた床を簡単にティッシュで拭き取ってから、こちらに背を向けたまま、さっきのパーカーを上半身に羽織った。
「涼一さんは、難しく考えすぎるのです」
「なにを?」
「それは、お父様の想いであるとか」
「親父の想いって、そんなもの――」
「当然ながら、ございます。お父様は涼一さんに、立派に成長なさってほしいのです。たとえ今は明確な目標がなかったとしても、勉強して望まれる大学に進み、その中で将来のビジョンを描くであるとか。そういった点では、普通のご家庭の父親と、なんら変わるものではないのではありませんか」
「だから、あなたを僕の元によこした?」
「そうだと思います。ですから涼一さんは、私をなんなりとご利用くださればいいのです。そうすることに抵抗を覚えるのは、涼一さんのお優しい性格故であると存じますが、先程も申しましたように、私のことはどうか例外と――」
「もういいですよ。その話なら聞き飽きました」
「涼一さん?」
「僕が今、どんな気持ちなのか、あなたにはわかりますか?」
しっかり欲望に溺れておきながら、裸のままだだをこねる子供(ガキ)。本来なら抗弁すること自体が、おこがましいのかもしれない。それでも俺は、なにかを言わずにはいられなかった。