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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密


「この前のは使っちまったから、もうねーの。だから、またかしてくれって言ってんだけど」

 それは理屈というものを放棄したような言い方だった。それだけに聞き入れない場合、脅しでは済まないことを予感させる。すなわち暴力だ。俗世間に疎い俺にだって、それを察することはできた。

「ごめん……今日は、どうしても無理なんだ」

「いいから、とりあえず財布みせろー」

「あ!」

「――ほぉら、持ってんじゃんか」

「やっ、やめてよ」

 そんな場面を前にして、俺がそこに関わろうとした心理はどういうものだったのだろう。前髪パッツンの彼に同情したから? 否、きっとそうではなかった。

 とにかく俺は――

「お金なら、あるよ」

 そう言って、彼らに関わってしまったのだ。

「はあ?」

 金髪の男をはじめ制服を着崩した連中が、一斉に俺の方を向いた。

「現金はあまり持ち歩いていないから、とりあずこれだけだけど」

 そう言って俺が財布から出したのは、十枚前後の一万円紙幣。

「?」

 それがピラピラと風に靡くのを見て、金髪と仲間たちは互いの顔を見合わせると、その後でニヤリと嫌らしく笑った。

「かしてくれんの、それ?」

「ないんだろ、返す気なんて。あげるよ」

「マジ?」

 そう言ってもう一度顔を見合わせてから、今度は声を上げて男たちは笑った。そして一頻り笑った後で、金髪は俺に聞いた。

「おまえ、名前は?」

「岸本涼一」

「そ。じゃあ遠慮なく。ありがとねー、りょーいちくん」

 そうして俺の手から金をむしるように取り、男たちはその場を後にしていった。

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