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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
「じゃ、じゃあ……」
そこまで言うなら仕方なしと、ドアノブに手を伸ばした。それが微かに震える。ドアを開けた――すると。
「なに、この音?」
カーテンが閉め切られて薄暗い部屋には、やや耳障りな音色が響き渡っている。繰り返されるこの感じはスマホのアラーム音だと気づいた。
「高坂さん……アラーム鳴ってるけど」
ベッドの方向に呼びかけると、枕にうつ伏せになっていた顔がこちらを向く。少し乱れたアッシュカラーの髪の間から、ぱちりと開かれた右目。毛布からはみ出て俄かに蠢く脚に、そこはかとなくドキリとする。
「……うん、さっきからうるさいの。止めて」
「なんで俺が?」
「寝る時、結構酔ってたから、スマホをどこ置いたか忘れちゃった」
「起きて探せよ」
「ウフフ」
「笑ってないで」
「ごめんなさい。でも、この通り朝は弱くって、まだ起きれそうにないの。だから、おねがーい」
「しょ、しょうがないなあ」
いちいち色っぽい高坂文水の雰囲気に調子を狂わされながらも、部屋に足を踏み入れた俺は音のする方向を探った。
どうやらアラーム音は、ベッドの下から聴こえてくるようだ。床に手をついて下を覗き込み、俺はそれを見つける。
「どうして、こんなところに転がってるんだよ」
「あ、そういえばベッドに入る前……なんか蹴飛ばしたような気がする」
高坂さんはそう言って、毛布の中でクスクスと笑っている。