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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで


「蹴飛ばした時に、気にしてくれ」

「だってさ、眠たかったんだもん」

 それが朝だからなのかは不明だが、彼女は相変わらず甘えたような口調。聞いてるだけで、思わず赤面しそうになる。

「取れそう?」

「まあ、なんとか――」

 俺は板張りの床に張りつくような体勢で、ベッドの下に右手を忍ばせた。懸命に伸ばしていくと、なんとか指先で触れることができた。

「ふう……取れたぞ」

「ありがとう」

「ど――!?」

 俺の言葉を詰まらせてしまった原因は、ベッドの上にあった。スマホを拾い上げ顔を上げたところに、シーツの上で頬杖をつく高坂文水の顔があった。

「――ういたしまして」

 言葉を続けた俺の顔の、すぐ近くで彼女は微笑む。

 刹那――ちゅっ、と。

「……!」

 鼻先で微かに鳴ったその音に、呆気に取られてしまった。

 そんな俺をよそに。

「もう、うるさいよ」

 右手から素早くスマホを取り上げた高坂さんは、文句を口にしながらアラームを止める。

「なに……今の?」

「うーん? ま、ほんのお礼の気持ちじゃない?」

 身体を起こし、彼女はとぼける。スマホを弄っていて、俺の方は見ていない。

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