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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密

「妹に手を出そうと思う時があれば、事前に僕に断ってからにしてほしい」
陸矢のあの言葉が、なんとも邪魔くさい。そう感じるくらいには、朱海のことが気になっていた。他の連中もきっと彼女を明らかに意識しながらも、陸矢の手前軽々に手を出すわけにもいかないのだろう。
そんな事情を当人は知ってか知らずか。朱海はことある毎に、俺に対して気のあるような素振りを取り続けていた。
たとえば、皆でカラオケに行った時にも。
「……」
朱海は他の連中の歌に耳を貸す様子もなく、一人でスマホを弄っていた。しかし暫くすると、スマホを片手で操作する傍ら、もう片方の手を無造作に俺の太股の上に置いた。
「?」
特に太股をさするでも掴むでもなく、単に置かれただけの手。その意図を察することができずに困り果てた俺は、仕方なくその手をどけようとした。すると――
「!」
まるでそのタイミングを計っていたかのように、朱海の手が俺の手を握った。テーブルの下で繋がれた手。それでも朱海は視線を合わせることもなく、涼しい顔をしていた。他の連中に気づかれないかと、肝を冷やすのは俺ばかりだ。
だが、大人しく手と手を握り合っていたのも、束の間のこと。
う……!
思わず声を漏らしそうになったのは、朱海の手が艶めかしく動き始めたからだ。長い爪で掌をカリカリと引っかいたかと思えば、次はなにやら文字を描くように蠢き、それから幾度も組み方を変えながら頻と指と指を絡ませてきていた。

