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第10章 木葉の秘密

「涼一くん、なんか怒らせるようなことした？」

　金髪に聞かれ。

「別に――だけどさ」

「ん？」

「ホントに朱海（アイツ）って、誰ともつき合ったことないの？」

「ハハハ、そんなわけねーじゃん！　処女に、あの雰囲気が出せるかよ！」

「だ、だけど」

「ああ、陸矢さんが言ってたんだろ？　あの人も妹のことになると、どうかしちまうみてーでさ。盲目ってゆーか」

　金髪はそう言ってから俺の肩をポンと叩き、それから肩を組むようにして耳元で言うのだった。

「要するに、バレずにやればいいってわけ」

「別に、俺は――」

「いいから、いいから。ただ、バレた時はしらねーぞ。変にフォローしたりしたら、コッチまでなにされるかわかんねーし。ヤルなら慎重にな」

　やっぱり、よそう。金髪は焚きつけながらも、陸矢への警戒心は隠そうとしない。それほど仲間内でも恐れられているということだ。

　詳しい経緯はわからないが、金城陸矢という男がこの連中のリーダーであるのは、陸矢の親の生業が関係してのことだという。あくまで噂として耳にした程度の話だが、それによればなんらかの反社会的勢力の、それもトップだという。

　普段は紳士的な態度の陸矢が、その裏にどんな顔を隠してるのか、想像するのに難くない気がしていた。それはちょっとした切っ掛けで醸し出す気配にも、そのヤバさが透けて思えていたからだ。