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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密


 あの五月女さんの大人の色香さえ、それを知りながら遠ざけると決めた俺だ。そして一時の性の高ぶりによって決意を揺るがすことが、苦い経験を生むことも承知したはず。

 五月女さんに比べれば、こんな雌猫の魅力なんでもない。俺はそんな風に自らに言い聞かせ、これ以上惑わされまいと必死だった。

「ねえ、涼一くぅん」

「なんだよ?」

「アニキから、なにか言われたの?」

「別に……そうじゃないけど」

 と、思わず目を逸らしたのが、いけなかった。

「ああ、やっぱそうなんだ。どうりで、急につれなくなったってゆーか」

「違うって。大体、どうして俺にばかり構うんだよ」

「そんなの、タイプだからに決まってるし」

「は?」

「嘘じゃないって。ホラ、アニキがあんなだからさー。私の周りにいる男ってぇ、あんな連中ばかりじゃない? わたしって、もっと普通っぽいのがよくてー。それに涼一くん、けっこー可愛いし」

「う、うるさいな」

 同年代の女子にそんな風に言われたのが初めてだった。自分で言うのもなんだけど、そもそも女子との会話すらほとんどしたことのなかった男が、こんな感じに言われて顔を赤らめたとしても仕方がないだろう。

「ねえ、いーじゃんかー。あのグループ以外の男友達と連んでると、アニキがうるさいわけでー」

「だ、だから……いいって、なにが」

 ベッドの傍らに立つ俺の手を、朱海が引き寄せた。そのまま倒れ込んだ俺の顔を胸の中に迎え、朱海はこう言うのだった。

「こっそり、つき合っちゃおーよ」

「だけど……やっぱり、せめて陸矢さんに言ってからじゃないと」

「もう、ここまでさせて、まだそんなこと言ってぇ。あのアニキが許すわけないじゃん」

「だったら、なおさら――!?」

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