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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密


 急に胸から解放されたかと思った刹那、朱海は両手で俺の頬を挟むようにして、そのまま唇を塞いだ。

 柔らかで塗れた唇を押しつけられた瞬間、柑橘系の香水の香りに交じるほんのりとした汗の匂い、それと言い表せない雌のフェロモンのようなものが一気に身体の中に押し寄せてきたかのようだった。

 ちゅ……。唇をゆっくり離すと、朱海はとろんとした目つきでこちらを見つめた。

「大丈夫。今日は、アニキも女のところだし」

「でも……」

「ふふ、まだ言ってる。だったら、もうさぁ。とりあえず、今夜だけでもいいじゃん」

「今夜だけとか……」

「だって、もう止まれそうもないしー。それなら、気楽でしょ――ね?」

 二回目のキスはゆっくりと確信的に。今度は一方的にされるのではなくて、俺の方からも唇を寄せた。自然と舌も緩やかに絡み合わせた。

「ねえ、涼一ってはじめてなんでしょ?」

「あ……朱海は、どうなんだよ」

 いつの間にか互いを呼び捨てにしたのは、キスをしたせいなのか。でも相手が五月女さんなら、こんな雰囲気にはならないことは明白。それは彼女の事情のせいでもあるけれど、こんな風に気安く感じるのは俺と朱海が同じ年頃であることも無関係ではないだろう。

「へへへ、わたしも、はじめて」

 こんなのが、小悪魔の笑顔というのかもしれない。大人の五月女日名子にあしらわれた時とは異なる、なんともむず痒い気持ちが芽生えていた。

「ウソつけ」

 これが等身大の恋だから? 否、それならベッドから始めるのは、どうなんだよ。

「だったら、確かめてみなよ」

 まあ、いいか。難しく考えることを止めて、早く楽になってしまおう。

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