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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密

相手を刺激したくなくて、できるだけ静かに話そうと心がけた。だけど、なにから伝えたらいいのか、頭の中で上手に整理することは難しかった。
「ふーん。木葉ちゃんは、何年生?」
「三年……です。そ、それで来年受験なので、塾に……今日だって、塾からの帰りで」
「それで、夜道を一人で?」
「いつもなら、お父さんかお母さんが迎えに、来て、くれて……だけど今日は、二人とも忙しくって……」
「そうか、それは災難だったね。あんな悪そうな連中に目をつけられて、怖かったろう」
暗闇の中、月明かりを写す相手の瞳だけを見つめ、私は何度も何度も頷いていた。
「はい、とっても……ですから、お願いです。もう、お家に帰してください!」
そう言うと同時に、私の瞳からは涙が溢れ出した。
「ああ、頼むから泣かないでよ。ほらほら、いい子だから、ね」
陸矢は少し戸惑ったようにそんなことを口にしながら、小さな子供でもあやすよに、私の頭を撫でた。
陸矢の言葉や態度は、どんどん柔らかになっているように感じた。もしかしたら、本当にこれで帰してくれるかもしれない。ふとそんな希望を抱きながら、私はしゃくりあげながらも必死に、こう続けたのだった。
「きっと……みんなが心配して、るっ……おと、さんもっ、おかぁ、さんもっ……妹やっ、おと、ぅとだって」
すると――ピクリ。
それは微かではあったけれど、確かな反応に思えた。
「……!」
私は暗い部屋の中で、相手の気配がどす黒く変化したのを、肌で感じたのだ。
「ふーん……木葉ちゃんには妹がいるのか。奇遇だね。僕にもいるんだよ……妹がさ」
季節は夏だというのに、鳥肌が立ったのが感覚としてわかった。
「もう話は終わったのかい? じゃあ、今度は僕の話も聞いてよ」

