この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密

◆◆◆視点・岸本涼一◆◆◆
「――『さあ、これからだよ』と、男は言いました。その言葉を聞いた途端、視界は再び真っ暗になります。でも、月が雲に覆われたわけではありません。私の心がそれ以上の酷い体験から目を背けた、ということでしょう。だけど、感覚の全てを閉ざすことはできません。だから、その先は闇の中、なにをされるかもわからないまま、恐怖と苦痛に耐えることになります。そして――」
自身の劣悪な体験。それを淡々と語り続けようとする夏輝木葉の姿に、俺は耐え難いものを感じた。
「な、夏輝さん」
「どうしました、お兄さん?」
「その……少しだけ、休まないか」
「そうですねー。話し続けて喉も乾きましたしー。なによりも――」
そこで言葉を切り、夏輝さんは俺の頬を人差し指で突いた。
「――お兄さんの顔、こんなに真っ青ですもの。木葉ちゃん、ちょっと叙情的に語りすぎちゃいましたかねー?」
そして、ニコリと微笑みを向ける。こんな話をしながら、どうしてそんな風に笑うことができるのかと思うほど、屈託のない笑顔だ。
「いや……俺が、どうこうではなくて」
もちろん彼女の辛い過去の場面に、間接的にとはいえ関わっている俺には、彼女の話を最期まで聞き届ける義務がある。その上で、夏輝木葉自身にも向き合わなければならない。
なにしろ彼女は「復讐」と口にしているのだから。

