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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
結局、高坂さんはショッピングには同行せず、別荘に残るという。俺が午後からバイトで留守にすると言っても、耳を貸す様子はなかった。
「食事は、自分で勝手に作らせてもらうから。冷蔵庫にあるもの適当に使っていいんでしょう」
「かまわないけど。でもなあ……」
「一人で残していくのが不安? 大丈夫だよ。金品をあさって逃げ出すようなことはしないって。ガラは割れてるもんね」
「そんな心配はしてないけど、退屈じゃない?」
「別に平気。私、一人で時間潰すの慣れてるから」
高坂さんはそう言って、ひらひらとスマホをかざす。
せっかく旅行に来てるのに、と妙な気持ちになった。だけど、さっき彼女の部屋で聞いた話からすると、それも仕方ないのだろうか。
彼女が行かないことを他の三人に告げると、夏輝さんだけは残念そうに口を尖らせていたが、瑞月の「いいよ。別に」の一言で、それ以上もめる様子はなかった。
「じゃあ、留守番はまかせてね」
笑顔で言った高坂文水を別荘に残し、俺は三人を駅に送りがてら、そのままバイトに向かうことにした。
これは余談かもしれないが、それだけの決定がなされるまで、当の高坂さんと瑞月たちは顔を合わせて話すことをしてない。すなわち俺が伝達係として両者の間を行き来したわけだが、女の中に入って予定の調整の行うのは殊の外、面倒であると実感していた。
アイドルグループのマネージャーさんとか、きっと大変だろうな。漠然とそんな思いをはせながら、この先二週間の我が身を案じる。