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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
「……」
ワゴン車のハンドルを握りながら、後部座席の三人の様子を気にした。高坂さんも話していたように、終始はしゃいでいる夏輝さんの存在により、一見して仲良し三人組といった様相ではあったが。
「ふふ、そうなんだ……」
松川さんの表情が、どこか硬いような。真ん中に座る夏輝さんを挟んで、瑞月に対してかなり気を遣っているようにも感じられる。単に俺が穿った目を向けているだけなのか。
もし気のせいでなければ、瑞月のちゃんとした友達は夏輝さんだけ? 高坂さんは「超ド級のお嬢様」というような表現をしていたけど、親がアレなせいで周囲からはれ物でも触るような扱いを受けていることは十分に考えられた。
その点では俺にも似たような経験があるだけに、心配になる。らしくない金髪は、瑞月のジレンマの表れなのだろうか。
「じゃあ、後で連絡してくれ」
とりあえず駅の傍に瑞月たちを下ろした後、バイトにはまだ早いことから、思い立ってスーパーに向かう。彼女たちが自炊するかは不明だが、ある程度の食材は備蓄しておきたかった。
買い物が終わると、まだ早めではあるがバイト先の喫茶店へ。
「あ、涼一さん。早かったですね」
「あれ、華火(かほ)。今日は休みじゃなかった?」
「マスターに、急遽出かけることになったから、二人でよろしくと。暇そうなら、適当に店閉めてあがっていいそうです」
「どうせ、ゴルフだろ。全っ然やる気ねーな、あのオヤジ」
「それは本人も常日頃から言ってますよ。この店を続けるのは義務だからであり、それ以上の理由はないって」
華火からそう言われ、俺はため息を零す。