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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
それでも、夏輝さんは――
「さてさて、お次はなにに乗ろうかなー」
などと、アトラクションを見渡しながら、空々しく言うが。
「また倒れたら大変だろ」
「エへへ、わかってますって。私もこれ以上、誰かに迷惑をかけたくありませんし」
「……」
なんとも微妙な言い回しに聞こえたのは、俺のせいなのだろうか。なんとなく、誰かのの中に、俺は含まれないのではないかと感じた。
「ねえ、お兄さん。お願いです、あとアレだけ」
そう言って、夏輝さんは指さしたのは、大きな観覧車だった。
順番を待ち、ゆっくり下ってきた丸いキャビンに乗り込むと、そこは束の間、二人だけの空間になった。
「平気?」
「はい」
夏輝さんはガラス越しの景色に目を向けながら、無邪気な笑みを浮かべている。ジャージ姿になったせいもあるのだろう。ぱっと見だと、修学旅行で来ている中学生のように思えてしまう。
「あの……夏輝さん」
「なんですか?」
「やっぱり俺のこと、恨んでる、よね?」
「うーん……」
右手の人差し指で顎先に触れ少し唸った後で、夏輝さんは答えた。
「一言で表すのは難しいです。特に今となっては、いろんな気持ちが混ざりすぎていて」
「そう……」
「でも、基本的には、そういう感情だったと思います。瑞月と友達になって、こうしてここに来ているのは、完全にそういう動機でしょうし」