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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
そうだ。いくら復讐であっても、その感情を陸矢たちに向けるのは並大抵のことではない。彼女の中の心の傷が、それを難しくしているのだ。
夏輝さんは事件後のことを、こう話した。
「救急車で運ばれた後、私はその後二週間を病院で過ごすことになります。身体の方が回復した頃を見計らって、警察の方から話を聞きたいという申し出がありましたが、私はそれに応じませんでした。怖かったあの夜の体験の記憶に、私は蓋をしたかったのだと思います。父や母、妹や弟がお見舞いに来た時は、まるで転んで怪我をしたくらいの雰囲気で、いつものように明るい私を演じていました。そして、それは病院の先生や看護婦さんや友達の前でも同じ。可愛そうだと思われるのが、一番辛いのだとわかっていたから」
「……」
「入院して何日目だったか――ある時病室に、両親が一人の男性を伴って、やって来ました。スーツを着て丁寧に挨拶をしたその人は、四十歳前後だったでしょうか。目力の強い、いかにもバリバリと仕事をしそうなタイプです。その人は力強い口調で、私にこの様なことを告げます」
夏輝さんは一つ息をついてから、その言葉を口にした。
『夏輝木葉さん、貴女に乱暴を働いた連中への仕置きは、私どもにお任せください。少なくとも、社会的には完全に抹殺することをお約束しましょう。貴女の傷に障ることなく、私どもはそれを果たす力があります』
「……」
その人が誰なのか、俺には見当はついている。親父の〝片腕〟として、グループ内を取り仕切っていた人物だろう。