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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
△ △
観覧車では俺たちの乗るキャビンが、もうすぐ一番高い位置へと到達しようとしている。
「うわー、高い!」
夏輝さんは素直に楽しさを表し、雲から頂を覗かせる山の景色を眺め、そしてやがてキャビンが下り始めると、少しだけ寂しそうに、その横顔を曇らせた。
「――お兄さんは、あの人たちが、その後どうなったのかご存じですか?」
「少年院に送られたのは、知ってる。でも、あの夜のことではなく、別件で」
「そうですね。私も被害届を出すことを望みませんでしたし。それに、私の両親はさっき話した目力の人から、お金を沢山受け取っていました。事を荒立てない代わりに、必ず復讐は果たすから、と。だからその後も、あの人たちが、今はどうしていると、そういった報告を定期的に受けていました。ちなみに一年前は、薬物依存症を回復するため施設にいるとのこと。それ以後、もう続報は必要ないと断りましたけど」
「……」
俺も耳にしていることがある。陸矢の父親が取り仕切っていた組織が、事実上解体させられたことを。しかも警察が一斉検挙に動いたわけではなく、より強大な裏社会の権力によって、文字通り潰されたということだった。
親父はありとあらゆる方面に繋がりを持っている。政財界にも警察関係者にも裏社会にも。その全ての力を利用して、息子の不祥事をもみ消したのだ。
「お兄さん、私、あの時のこと憶えてるんですよ」
「あの時?」
「ほら、ベッドで動けなくなっている私のこと、部屋の外から」
「ああ……あの時、夏輝さんは俺を恐れて、近づくなと」
「違いますよ」
「え?」
「確かに、そう言ったかもしれませんが、不思議と怖かったわけではありません。ううん、寧ろ――」
夏輝さんは言いながら、ニコリと微笑んだ。
「寧ろ、安心したんです。部屋の入り口で、オロオロとしている、その人影に――私は」
夏輝木葉は、俺になにを求めるのか。それは未だ不明である。