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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
カウンターの中で華火と二人、カップや食器などを棚に片付けていた時だ。
「あの、涼一さん。この本、ありがとうございました」
華火が差し出してきたのは、この前、俺が貸した数冊の本だった。家に本が山のようにあると話したところ、なにか貸してほしいと言われたのだ。
「もう読んだのか」
「ええ、今夏休みなので、読み始めたら一気です」
「それなら、よかったよ。どれも定番の名作ではあるけれど、普段本を読み慣れない人には、古くてとっつきにくいかなって、少し心配してたんだ」
「全然、面白くって! また涼一さんのおススメがあれば、よろしくお願いします」
「うん。次までに見繕って持ってくるよ。でも、どうして急に本を読もうと思ったんだ。マンガしか読んだことがないって言ってたのに」
「そ、それは……まあ、なんとなくですが」
「そっか。でも、やっぱり読書はいいよな」
しばらくの間、貸していた本の話題で話が盛り上がる。そうして一息ついた時、俺はふと呟いていた。
「ああ……華火と話してると、なんかホッとするなあ」
「は? な、なんすか、いきなり」
「だって、一番普通なんだもん」
「普通って、キャラが薄いってことでしょうか? だとしたら、ちょっとムカつきますが……」
そう言って、華火は怪訝そうに俺を見つめている。
浦辺華火(うらべ かほ)は、地元の高校生だ。この店では先に働いていたので、一応バイトの先輩ということになる。
「いや、そうじゃなくてさ――」
俺は頭を掻きながら、昨日から別荘に宿泊している妹とその友達のことを話した。もちろん、あったことをすべて話せるわけもないが、俺としては今まで味わったことのない類の気苦労を、誰かに聞いてもらいたかったのだ。
しかし、話を聞いた華火の反応は、なぜか冷たい。
「それって、自慢ですか?」
「はあ? なんでそうなる」
「だって涼一さん。それって、ハーレムアニメの主人公みたいですよ」