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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
華火は元来、アニメやマンガに精通している子だ。そんな彼女ならではの発想と表現なのだろうが、俺にとってはとんだ濡れ衣である。
「確かに女だらけだが、それだけに気を遣いまくりで――」
「ラッキースケベとか、あったんじゃないですか?」
「ラッキー……スケベ?」
「ほぉら、身に覚えがありそうな顔してる」
華火にそう迫られ、期せずして冷や汗が滲む。彼女の言う「ラッキースケベ」がなにを指すのか具体的にはしらないが、それを元に連想する場面には既にいくつも覚えがあった。
その中でも――闇の中の情交の場面を思い浮かべそうになり、慌ててそれを打ち消した。
「な、なにもないって。あるわけないだろ。妹と、その友達なんだから……」
我ながら言い回しが妙であることから、更に追及されそうだと思ったのだけど。
「そうですか……じゃあ、というのも変ですけど」
なぜか急にしおらしくなった華火は、エプロンのポケットからなにかを取り出して言った。
「こ、ここに……たまたまムビチケがありまして、ですね」
「たまたま?」
「は、はい……」
「なんの映画の?」
「来週公開のアニメなんですが……」
「ああ、華火が観たいって言ってたアニメか。今、かなり話題だよな」
「そ、そうなんですよ。それが、たまたま来週木曜……バイト終わりに行くのに、丁度いい時間でして……」
普段、淡々と話すイメージの彼女が珍しく口ごもっている。両手で持ったムービーチケットで顔を隠すようにしながら、華火は言った。
「よっ……よろしければ、一緒に行っていただけませんか?」