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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
ヘッドライトを灯す対向車が増え、夕暮れ時であることに気づく。流れゆく街並みも、次第に色とりどりの光の装飾を纏い始めていた。
その中で、一際派手なネオンの建物を前方に認め、夏輝木葉は無邪気にそれを指さした。
「あ、あそこなんて、いいのでは? いかにもラブホって感じで」
その提案を一旦スルーしつつ、赤信号で車を停めると、俺は窓から見える夕日を眺めた。
昨日は高坂文水と、その前の日は松川土埜と眺めたそれは、今日に限って混沌の象徴であるように感じられた。
それは単純に、俺自信の戸惑いのせいだろう。否、もっと明確に言えば、俺自信のせいだ。
松川土埜にしろ高坂文水にしろ、俺は彼女たち関わりを持った上で、そのトラウマだったり悩みだったり、一言で表せないものに、それでも必死に寄り添うことはできたのかもしれない。できていなかったとしても、そうしようと必死になることに迷いはなかった。
だけど今、ここにいる夏輝木葉に対しては、俺自信の自責がある故に、ということなのだろう。能動的に、彼女の心の傷と向き合うことを難しく感じてしまっていた。
端的に言うのなら、なにを言ってもしても「お前がなにを?」と、内なる自分にあるいは自分でない何者かに指摘される気分なのだ。