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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
過去の関わりを紐解いた今となっては、お互い純粋に一人の異性として向き合うことは難しいと思えた。
「いいんじゃなですか、それも。昔の人なんて親同士が決めた相手と祝言の席で、はじめましてだったりとかー。それでも一生添い遂げちゃうんですから、恋愛なんて後回しで十分ってことです」
無茶な理屈に少し呆れながら、夏輝さん自身どうしたいのか見失いかけてる気がした。
「だからって、俺と結婚することを望むわけじゃないだろ?」
「ええっ、普通に超玉の輿ですけど! 大金持ちなんですけど!」
「真面目に」
俺自身は、現状只のバイトだし……。
「えへへ、まあ、そうですねー。この先のことは、正直あまり深く考えていません。でもね、お兄さん」
「ん?」
「私はずっと、あの時の人影を――『涼一』を探し求めていたんです。そうしている内に、最初の頃に抱いた気持ちが次第に変化していることに気づきました」
「変化?」
「はい。その気持ちとは、憧れに似たもの」
「!」
いきなり夏輝さんが、俺の胸に飛び込んできた。
「私はお兄さんに、憧れていたんです、ずっと」
それが、俺に対する彼女の本心なのか……。
俺の心は、まだ混沌に満たされている。
そんな内面を知ってか知らずか、夏輝木葉はとろけそうな眼差しで俺を仰いだ。
「とりあえず、こんな場所に来ているのだから、この望みはいいですよね?」
「?」
「もう一度、ちゃんと抱いてください。そして、確かめさせてください」
「なにを、確かめたいの?」
「お兄さんとなら、怖くないって」
そう言って彼女は、顔を赤らめ、そして無邪気に笑った。
とても魅力的なその笑顔には、おそらく様々な想いが隠されている。
「……」
俺だけが、本当にそうなら、彼女に応えるべきなのか。
この先も、ずっと――?
目を閉ざした夏輝木葉に、俺は迷いのまま、キスをするのだった。