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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
夏輝木葉は、いつもニコニコと笑っていた。過去を知った今にして思えば、その笑顔は健気だと感じる。その笑顔で傷を隠しながら、この夏、彼女は俺の元まで辿りついてくれた。
本望である、とさえ感じる――今なら。
その想いを僅かに転じて、愛おしいと感じることは、別に難しいことではないのかもしれない。彼女は明るくて笑顔の眩しい魅力的な女性だ。彼女がいみじくも言っていたように、恋愛は後からでも間に合うのだろう。
瑞月はどう思うか、まずそれは気になっている。親父と絶縁する前に、今度こそ瑞月のことを考えてやらなければならない。高校の時みたいに、置いてきぼりにはできないから――でも、どうすれば?
瑞月は自分の親友と共に生きようとする俺を、果たしてどう思うのか。それに加え夏輝さんが瑞月に近づいた経緯を知れば、ショックを受けることになるはずだが……。
他にも俺の中に残る気持ちは、確かにあって。この瞬間は頭の中ですら名前を出すことを避けるのは、これ以上混乱したくないからだ。それに今は自分の望みはいい。それを優先する資格は、ないと思うから。
いつの間にか、シャワーの音は止まっていた。気づいて程なく、カチリ、と音を立てバスルームのドアが開いた。ピンクのバスローブを纏った夏輝さんが、ソファーに座る俺の前に立つと、両手を肩に置く。
「ふふ、綺麗にしてきましたよ」
照れたように微笑むと、耳元でそう囁いた。そのままキスをしようとする彼女の身体を軽く押し返すと、俺はソファーから立った。
「俺も、浴びてくるよ」
「はい」