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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
△ △
彼女の口にした「失敗」とは、どういう意味だろう。それを聞きたいのに、なにも聞けないでいる。ましてや慰めの言葉なんて、今の俺が口にできるものではなかった。
俺はやっぱり迷っていたのか。それとも、恐れていたのか。あるいは覚悟が足りなかったのか。
「……」
夏輝さんは、まだ黙ったまま。来る時には長く感じた道のりが、帰りはどんどん進んでしまう。別荘に帰り着く前に、もう一度ちゃんと話をしなければ。
話してどうにかなることなのか、それはわからない。それでも――
「時間をくれないか」
「時間?」
彼女は聞き返し、ようやく俺の方を向いた。
「うん……今日、話を聞いたばかりで、まだ気持ちの整理がつかないんだと思う。だから、もう少し時間をおけば……」
「それは、どれくらいですか? 私が別荘にいる間に、整理はつきますか?」
「それは……」
「ふふ、無理ですよー。大体、明日は瑞月とデート。それも、只では済みそうにありませんよねー。つっちーや文水さんとだって、なにもなかったとは思えませんしー。お兄さんは抱えるだけ抱えて、答えを先送りにして、そして行き詰まるんです。たとえ時間をおいたとしても、そんな未来しか見えません。だったら、いっそ――」
「え?」
「――捨てられるものは、捨ててしまえばいい。そう思いますよ」