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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
「それ、どういう意味?」
「別にそのまま、少しでも身軽になるために。なんだか、時代にも合ってるでしょ」
「そうじゃなく、捨てるって一体なにを?」
そう問うと、夏輝さんは俯き、一つため息を零す。
「……お兄さんは、私に応えようとしてくれました。その時点で、言い訳は成り立つんです。気持ちはあっても、身体が応えなかったんだと。それなら私も、仕方ないと、思うしかありません」
「夏輝さん……」
「ごめんなさい……嫌な言い方になってますね。私って、最悪な性格なんです」
「そんなことは絶対にない。明るく振る舞って、みんなを盛り上げて、見えないところで気遣いだってできる――」
「そんなの表層ですよ。私が必死に作り上げたんです。弱くて惨めな自分を悟られないために」
それは取りも直さず、あの事件があったから。
「特に事情を知ってる家族の前では、頑なにそう振る舞いました。もちろん、妹や弟は詳しく聞かされてないと思いますが。それでも、私があんな風に入院したものだから、只事でないことはわかったと思います。だから身体が回復した後は、すっかり元気なお姉ちゃんをアピールしたんです」
「……」
そんな彼女を想像すれば、やはり胸が締め付けられる想いになる。
「両親が例の〝目力の人〟からお金受け取ったのも、私がそういう態度を取ったからだと思います。でも今にして思えばそれは、私が内面の傷を隠そうとしていたことを察していたんでしょうね」
それが彼女にとって、本当によかったのか。この事情においても、俺のしたことと俺の境遇が深く関わってしまっている。