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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
夏輝さんは俺の態度に「ふうっ」と、声に出して息をついてから、またしても視線を暗いだけの外の景色に逃がした。
「すべてを晒して、それを利用しようとしたことが、私の最大の失敗です。つっちーにも文水さんにも、敵わないことはわかっていたから」
「どうして二人が? それに利用って?」
「だって少なくとも、お兄さんは今日まで、私のこと〝お騒がせ女〟ぐらいにしか思ってなかったんじゃありません?」
まあ、四年前のことはちらついてはいたけど、確定はしてなかったし。
「確かにトラブルメーカー的な側面はあるかと。でも、それだって夏輝さんが、敢えてそういう立ち位置を取ってるようにも見えたけどね」
「だから、それも含めて失敗なんです。最初に覚えた高鳴ったものを素直に表さずに、引っかき回すような真似をして、そうこうしてる間につっちーや文水さんが、お兄さんに対して好意を抱き始めていた――でしょう?」
「それは……」
好意という一言で、片づけられるものでは、ないのだろうけども。
「まあ、いいですよ、そこは。とにかく出遅れた私としは、最大の武器を使うしかありませんでした。赤裸々に過去の場面を話し、その上で私を選ばせようとしたわけです。お兄さんの負い目に乗じて。意図せずそうしたわけではなくて、計算した上で利用したんです。自分の傷も、お兄さんの性格も」
「本当に、それが復讐だったの?」
「もちろん、お兄さんの態度によっては、もっと違うものになっていたでしょう。でも思った通り、いえ想像以上に、お兄さんは私に対して責任を感じてくれました。そして好きでもない私を、一度は引き受けようとしてくれた。でも、私の企みは裏目に……そりゃそうです。そんな重たいもの背負わされたら、誰だって」
「責任だけではないし、好きでもないというのも、今なら違う。それに、企みだなんて思ってもいない」
「いいんですか、そうやって曖昧にしても。私はこういう嫌な女です。今なら、さっぱり捨てられますよ。その方が後々、面倒がありません」
「そんな言い方、やめるんだ」
「こういう言い方しかできないから、嫌な女だと自称してるんです。何度も言わせないでください」
「じゃあ、どうして泣いているんだよ?」
「――!?」
気づいた彼女を認め、俺は車を路肩のスペースに停めた。