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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第10章 木葉の秘密
「泣きそうなくせに、悪態をついて人を遠ざけようとするとこも。落ち込んでいても、結局は茶化さずにはいられないとこも。そもそも傷を隠すために、ずっと明るく振る舞ってきたことも」
「な……なにを、わかったようなことを言ってるんですか」
「そうだね。俺はまだ夏輝木葉のことを知らない」
「は? 急にフルネーム? あはは、少し自分に酔ってません」
「茶化すな」
「だって……」
言葉であしらうつもりが、逆に気圧されていることに気づいた。
そんな時、不意に私の心に突き刺さった、言葉。
「でも、その全ては人への思いやりから、きている」
「ばっ――」
思わず、ぐっと胸にこみ上げたものを必死に押さえて、私は次の言葉を探す。
「――馬鹿なんじゃないですか? 言ったでしょう。私は同情を買って、義務や責任や負い目や、そんなものまで総動員して、お兄さんを縛り付けようとしてたんですよ」
「そうせずにはいられなかった。だから、ホテルでの夏輝さんは、とても素直に見えたよ。俺の前でしかそうできないなら、そうしてくれればいい」
「本気で、言ってます、それ?」
「ああ。夏輝さんを抱こうとする前に、本気で考えたからね」
「ど、どんな感じで?」
「えっと、それを話すに至っては、一つ前提があって。これは俺自身の問題として、親父とは決別しないといけないと思ってるんだけど」
「え、そうなんですか?」
折り合いが悪いことは、これまでの話からも察することはできたけれど。