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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
「瑞月!」
部屋の方に呼びかけるが、シーンとした静寂が返ってくるだけ。首を傾げながら靴を履き、とりあえず外に出てみる。
「あれ?」
耳にしたのは車のエンジン音だ。時刻は既に約束の八時を十分以上過ぎている。どうも痺れを切らした瑞月が、先に乗り込んでいるようだ。
近づいてみると案の定、朝日が窓ガラスに反射しているため良くは見えないけど、その姿を助手席に認めることができた。
初っぱなから、やらかしたかな。ドアを開く前、そう思い頭を掻いた。昨日もその前も、あの様子からすると、瑞月の機嫌はすこぶる良くない、と考えた方が自然だろう。その上、遅刻スタートとなれば、もうこの時点で今日一日、先が思いやられるというもの。
まあ、こうしていても仕方がない。まずは機嫌を窺ってみよう。そうして、ドアを開いた時だった。
こちらに向き直った時、サラリと広がった、その髪色に、まずは驚かされた。金色ではない、黒髪。否、僅かに茶色がかった、俺の知る瑞月本来の髪色だ。
そして、俺を唖然とさせたのは、そればかりではなくて。
「遅いよ、お兄ちゃん!」
瑞月ははにかんだように笑い、その言葉で俺を迎えているのだった。