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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
「?」
新幹線を降りた人々が、不思議そうに俺たちの方を見ていく。だけど、それはそうだろう。
同じく新幹線を降りた俺と瑞月は、素早く可動式のホーム柵を回り込むと、姿勢を低くして背中を柵に張りつけると、新幹線が発車するのをじっと待っていたのだ。
他人からみたら、いい歳した男女が〝忍者ごっこ〟でもしているのかと、眉をひそめたとしても無理はない。
それは、ともかく――
『只今二番線から、――発車いたします』
新幹線はそのまま、次の駅へと走り去っていった。
「見られなかった、かな?」
「たぶん。向こうとしても悟られたくないはず。同じ車両には来なかったしな。位置情報を掴んでるという、油断もあったのかもしれない」
「あの新幹線、どこまで行くの?」
「終着はI県K市」
「やった! これで完全に撒いたね」
流石に、そこまで気づかずにいてはくれないだろう。まあ、瑞月が嬉しそうだから、今は水を差すようなことは言わないでおく。今は、それよりも――
「スマホ、よかったのかよ」
監視を撒くためとはいえ、まさか本当に置いてくるとは想定外だが。
「お兄ちゃん知ってた?」
「なにを?」
「私ん家って、お金持ちなんだよ」
そう言って笑う瑞月を前にして、これには俺も苦笑いするしかなかった。
まあロックもかかってるし、後で忘れ物センターに届ければ問題ないと思うが。最も、自分を見張る道具だったと知って、瑞月が再び使いたいと思うかは微妙だろう。