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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
元より、そんなところに混ざるつもりはないが。それ以上に、別荘に一人にしている高坂文水のことが気になっていた。もちろん、それは管理人の立場として。
車を別荘に向かわせ、帰り着いたのは午後六時半ごろ。
「ただいまー」
この言葉を発したのは、果たしていつ以来だろう。軽く記憶を辿りかけて、しかしすぐに止める。中に入ると、リビングの方を窺った。
灯っているのは間接照明だけで、人のいる気配を感じない。自分の部屋かな、と吹き抜けから二階の様子を眺めてみる。
薄暗い室内でソファーのところまで足を運んだ。手にした買い物袋やバッグを一旦そこに置き、その後で照明を点けるつもりで。
だが、ソファーの上に(少し雑に)荷物を置いた瞬間のこと――。
「ちょ、ちょっと! 痛ぁい!」
「えっ――!?」
そこに、いたのか? 驚いた俺は、たった今、手放したばかりの荷物を持ち直そうとした。しかし振り向いた刹那、床で足を滑らせ大きくつんのめってしまう。
「うわっ!」
「きゃっ!」
その結果、背もたれの側からソファーの上に倒れ込んだ俺は、勢いのまま買い物袋を押し退けていた。
ドサドサと中の食材が辺りにまき散らされ、ペットボトルや缶詰がフローリングの上を転がる音を聴く。
数秒して、それが治まった時に。
「……えっと、おかえり、かな?」
俺の下敷きになっている、彼女は言った。
「ああ……ただいま」