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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
次の日、迎えの車に乗り込んだ私は、都心に複数ある、お父さんのオフィスの一つに連れられて行った。
お父さんは会議の真っ最中だったのに、広く整然とした会議室に私を招き入れると、そこに居合わせた面々に、私のことを紹介したのだった。その時までは、とても上機嫌に。
すると、そこに居た人々は私を眺めながら、口々に行った。
「これは、また素敵なお嬢様で」「ホントに、とても可愛らしい」「いやはや以前にお目にかかった時よりも数段、美人にご成長なさって」「若い時のお母様に、そっくりですな」
「……」
私は凍りついたような笑みを浮かべながら、なんとかその時間が過ぎ去るのを待つしかなかった。
それに対してお父さんは、私に向けられた誉め言葉がありふれたものだったことが気に入らなかったのだろうか。急に不機嫌な顔になると――
「もう結構だ。娘と話がある。全員、出て行ってくれないか」
とても冷たい口調で、そんな風に言った。
言われた人たちは顔を見合わせながらも、不服を口にすることなく、いそいそと会議室から退室した。ガランと広い会議室には、私とお父さん、二人きりが残されていた。
お兄ちゃんがいなくなってから、私とお母さん、そしてお父さんと三人で会う機会が、とても少なくなったように感じる。特に最近は、皆無に思えた。お母さんなのか、お父さんなのか、それとも二人ともが避けているのか。
私は、仲の良い二人の姿しか、知らなかったのに……。