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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
「きっ、岸本さん!」
驚いたようにそう声を上げたのは、コンパの席で私を抱き寄せた先輩。あの時、私の肩に回した右手は、包帯が巻かれ三角巾で吊られていた。
「どうしたんですか、その腕?」
気になって聞いてみると。
「な……なんでもないんだ。ホント……大丈夫だから」
「……?」
私は、その狼狽えた感じを不思議に思った。だけど次の瞬間、そういった態度がどういう理由からなのか、気づくことになった。
その先輩は他の二人と顔を見合わせた後で。
「この前は、すいませんでした!」
周囲の学生が何事かと足を止める中で、私に向かって深々と頭を下げた先輩は、更にこう続けたのだった。
「あのサークルなら、既に俺たち三人とも退会した。その上で、もう二度と近づくことはしないと約束する」
「あの、それって――」
「これからはキャンパスで俺たちを見かけても、無視していいから。じゃあ、これで」
三人は逃げるようにして、そのまま私の前から姿を消した。そして言葉通り、それ以降、私に近づくことはなかった。
私には、同じような光景に見覚えがあった。あれは中学生の時。お父さんとお母さんが結婚した時の記事を元に、私はクラスメイトから、からかわれたことがあった。
あの時も――。
「ごめんなさい。もう二度としません」
私をからかっていたクラスメイトたちは、私の前に並ぶと、一斉に頭を下げた。先生に叱られたわけでもなく、突然そうしたのだった。
あの時のクラスメイトも、大学の先輩たちも同じように怯えていた。そして彼らをそうさせたのは――お父さんの権力(ちから)。
そしてこの一件をきっかけに、自分が結局はお父さんの掌の上にいることを、私は思い知ることになった。