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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
問題は、なにも大きな権力を持っていることじゃない。あの人(お父さん)は、真面ではないんだということ。そして自分に向けられた愛情が、とても歪であることも……。
それから暫くは、空虚で無気力な日々が続いた。〝籠の中の鳥〟である自分に、そこから出られない現実に、絶望にも似た想いを抱きながら……。
そうして夏の暑さが本番を迎えようとした頃、木葉からこんなことを言われた。
「ねえ、瑞月。夏休みの予定は? よかったら、一緒にどこかいかない?」
「旅行?」
「うん。サークルの友達も、何人か誘ってさ。あ、もちろん女子限定だよ。ね、どうかな」
私はため息をついてから、こう答えた。
「たぶん、お父さんが許してくれない。許してくれたとしても、護衛みたいな人がつけられると思う」
「ええー、どこかのお姫様みたーい。家がお金持ちすぎるのも、大変だね」
「あの人(お父さん)が異常なだけ。そんなわけだから、私はパス。他のみんなと楽しんできてよ」
「でも私は、瑞月と行きたいの!」
木葉がそう言ってくれるのは、嬉しかったけど。
「ごめんね。でも私が一緒だと、木葉にも迷惑かけちゃうと思う。そうなったら嫌だから」
「そっかぁ。うーん……」
木葉は暫く唸った後で、急に閃いたように言った。
「あ、そうだ! お兄さんのところは?」
「え?」
「ほら、どこかの別荘にいるって言ってたじゃん。別荘ってゆーぐらいだから、海辺とか避暑地とかそんな感じの場所なんじゃない? 一庶民の勝手なイメージとしては」
「まあ……一応、そんな感じだけど」
「だったら、どうかな? お兄さんのところ行くなら、お父さんも許してくれるんじゃない」
「……」
正直、この時はあまり乗り気ではなかったと思う。だけど木葉が思いの外、しつこく言ってくるので、ためしにダメ元でお願いしてみることにした。
「え、いいの?」
すると、私も拍子抜けするくらい。あっさりと、許可は下りた。