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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
無理もないと思う一方、その答えに行き着くのは早すぎる気がする。まずは視野を広げるために、どうすべきか。瑞月をほったらかしにした俺だからこそ、本気で考えなければならない。
瑞月は俯いたまま、更にこんなことを言った。
「私……お父さんが、私を見る目が怖い」
「そう感じるようになったのは、いつから?」
「わからない。でも……涼一が家を出てから、少しずつ変わっていったんだと思う」
そういえば、俺が家を出る時に――。ふと脳裏に、親父と交わした会話の一部が蘇っていた。
△ △
「僕の本当の母親のことは、教えてもらえないんですか?」
家を出る了承を取り付けた後、俺は無駄だと思いつつも、その様に親父に食らいついた。
戸籍を見ても親父の古い知人に聞いても、結局それを知ることはできなかった。親父の口から聞くしかないと思ってのことだけど、やはりと言うべきか、親父の反応は冷ややかだった。
「今更、知ってどうする?」
「どうするかではなく、知る権利があると言っているんです」
ドン! 親父は机に握った右手を振り下ろすと、俺を睨みつけて言った。
「今の家族の形に、なにか不満でもあるのか――涼一?」
「そ……そうではなく」
「一人になりたいというから、それも認めたところだな」
「……はい」
「じゃあ、感謝しろ」
「……ありがとう、ございます」
今、振り返っても情けないが、当時の俺では、それ以上食い下がることはできなかった。
そして、この後だ。親父が俺に、妙なことを訊ねたのは。
「涼一、お前は瑞月のことを、どう考えている?」
「? ……妹、です」