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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
俺は昔の場面を思い返そうとする。あの時、俺はどう思いどう感じていたのか、振り返っておきたかったから。
俺が中学に上がった頃で、瑞月はまだ小学六年生。それまで同じ場所に通っていた時と異なり、送迎の車も別々になると、帰る時間も俺の方が遅くなることが増えた。
更に親父から自室の使用を許可され、家に帰るとそこで一人で過ごすことが多くなっていった。そんな時はたまに、ドアをノックする音が響く。
△ △
コン! ――コンコン。
強く一回、それから間を置いて、弱く二回叩く。別に決めていたわけではないけど、それは瑞月のノックの仕方だった。
それを聞くと俺はドアの前に立ち、フッと一つ息をしてからドアを開くのだ。
「いいなあ、私も早く自分の部屋使いたい」
瑞月は俺の顔も見ずに部屋の中を覗き込むと、そんな風に言った。
「中学になったら使わせてもらえるよ。それも、ここより広い部屋が与えられると思う。父さんは瑞月に甘いから」
「狭くてもいいよ。私も自分だけの空間が欲しいの」
「そんな話をしにきたのか?」
するとドア枠に寄りかかっていた瑞月は、右足をパタパタとさせ空を何度か蹴った。そして、いかにも文句があるように顔を背けたまま、こう言うのである。
「だってお兄ちゃん、ずっと部屋にいるから。朝、顔見ただけで、今日はまだ一度も話してないし……」
「仕方ない……だろ。テストあったりいろいろで、勉強だって――」
じっ……。
瑞月に見つめられ、俺は下手な嘘を続けることができなかった。