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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
「これくらい、なんでもないって。私、中華レストランでバイトしてるもん」
「厨房で?」
「そうだけど、変?」
「まさか。でも、店の人からは、ホールをやるように言われない?」
「言われるー。店長には厨房しかやらないって、何度も言ってるのに。でも、なんで?」
「ハハ、それは――」
そのルックスだもの。そう言いかけるけど、曖昧な笑いでごまかした。
話しながらふと、さっきの場面を思い出している。薄暗い中で「別のことをする?」そう問いかけた彼女に、否応なく前夜の情事を想起させられた。
だが今の彼女からは、同じ匂いを感じられない。昨夜の相手は、高坂文水ではないのか――?
たった二日ほどで、既にいろんな顔を見せてくれた気がする。そんな彼女に魅力を感じはじめているからこそ、胸の奥でモヤモヤとした感情が渦巻く。
ダメだ! 惑わされないと肝に銘じたばかりなのに……。
高坂さんが手際よく炒飯と中華風スープ、そして野菜炒めを完成させると、ダイニングテーブルで肩を並べ二人で食事をする運びになった。
我ながらその光景を妙なものだと感じながらも、とりあえず炒飯を一口――すると。
「う、美味い……!」
自分でも時々、炒飯を作ることはあったが、まるで別物。広がりゆく味と香りに驚き、その熱さにハフハフと息を鳴らしながらも、山盛りにしたレンゲを夢中で口に運んだ。
喉を詰まらせそうになり慌ててスープを流し込むが、それがまた絶妙な味わいだ。炒飯との取り合わせの完璧さに感激して、思わず隣の高坂さんの顔を見やった。