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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
△ △
あの時、俺は知っていて、瑞月はまだ知らなかったのである。俺たち兄妹に、血の繋がりがない事実を……。
そう、意識しなかったはずがない。俺は既に知り、瑞月もそれから程なく知ることになった。それが、まさに思春期を迎えようという頃のことなのだ。最も身近な存在がある日を境に、異性であることを思い知った。
お互い意識せずにはいられなかったとしても、なにも不思議なことではないのかもしれない。
「胸の高鳴りが、止まらない」
今、俺の目の前の瑞月は、少女のあどけなさを残しつつも、大人の女性に成長しようとしている。止まることのない時間の流れの中で、自分だけが足踏みしているように感じ、きっと焦っていた。
「結局、そうやって黙っちゃうんだね。答えてくれるんじゃ、ないの?」
「……」
潤んだ瞳を向け、頬を紅潮させ、テーブルの上の俺の手を取り、俄に指を絡めた。
そして、瑞月は言うのだ。
「ねえ、ドキドキしない? 私は、してる」
「!」
今、俺の目の前にいるのは、女だ。
松川土埜が、高坂文水が、夏輝木葉が垣間見せた顔と同じ顔をしている。
だったら、認めてしまえばいい。
「瑞月、俺は――!」
スマホがメッセージの着信を告げたのは、そう言いかけた時。瑞月は電車に置いてきていたから、当然俺のもの。
「……いいよ。見れば」
「ああ、うん……」
言葉の勢いは、完全に削がれてしまっている。口にしようとした言葉も、既に頭の中に見あたらなかった。
俺は瑞月に言われるまま、バッグからスマホを出すとメッセージを確認することにするが。
「えっ?」
メッセージ送信者と、その用件は――。
(五月女日名子)【今、電話で話せますか?】